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令和6年4月から有期雇用労働者に対する労働条件明示に関するルールが変わります

2024年4月2日

コラム

はじめに

この度、いわゆる無期転換ルールに関連して、有期雇用労働者に対する労働条件明示事項を追加する内容の改正が行われ、令和6年4月から適用されることになりました。

本稿では、改正の概要と実務上の留意点について解説します。

無期転換の仕組みについて

まず、前提知識となる無期転換の仕組みについておさらいしておきます。

同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者は無期転換の申込みを行う権利を取得します。

そして、労働者が契約期間満了までの間に使用者に対して無期転換の申込みを行うことで、有期労働契約の期間満了後に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に契約形態が転換します。

使用者はこの申込みを拒絶できません。

これがいわゆる無期転換です。

この無期転換により成立した無期労働契約の労働条件は、別段の定めがない限り、現に締結している有期労働契約のものと同一となります。

改正の概要

今回の改正では、上述した無期転換の仕組みそのものに変更はありませんが、無期転換の申 込みの機会確保や紛争の防止の観点から、有期契約労働者に対する労働条件明示事項として、 以下の内容が追加されました(労働基準法施行規則第5条の改正)。

また、有期労働契約締結後に更新上限を新たに設ける場合や、契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合は、あらかじめ、その理由を労働者に対して説明することが求められることとなりました(H15.10.22 厚労告357『雇止め告示』の改正)。

さらに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するにあたっては、正社員等とのバランスを考慮した事項(業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないとされています(同『雇止め告示』の改正)。

実務上の留意点

今回の改正に伴い、使用者としては、有期労働契約の締結時や更新時に、労働条件として明示すべき事項が増えることになりますので、労働条件通知書を改正の内容をふまえたものに改訂しておく必要があります。

新しく追加される明示事項のうち「1 就業場所・業務の変更の範囲」「2 更新上限の有無と内容」については有期労働契約締結時とその後の契約更新時ごとに、「3 無期転換申込機会」と「4 無期転換後の労働条件」については無期転換申込権が発生する契約更新時ごとに、それぞれ明示が必要になります。

複数のパターンの労働条件通知書を準備するのが煩わしければ、1ないし4の事項をすべて網羅した労働条件通知書を準備して、契約締結時・更新時にかかわらず、共通の書式を利用できるようにしておくとよいでしょう。

また、今回の改正により、無期転換後の労働条件の一部については書面の交付により明示する必要があるとされているので、無期転換後の労働条件に変更がある場合には、労働条件通知書に別紙を添付し、変更のない事項を含めて明示しておくと確実です。

今回の改正をふまえた労働条件通知書の書式については、厚生労働省が公開しているので、参考にしてみてください。

おわりに

企業にとって有期雇用労働者はなくてはならない存在です。

紛争を未然に防ぎ、有期雇用労働者の皆様に気持ちよく働いてもらうためにも、今回の改正が適用される令和6年4月までに、労働条件通知書の改訂を含め、万全な対策をとることをおすすめします。

執筆弁護士について

弁護士 渡辺 伸樹

渡辺 伸樹(わたなべ のぶき)

弁護士法人一新総合法律事務所 
理事/長野事務所長/弁護士

出身地:新潟県上越市 
出身大学:中央大学法科大学院修了

主な取扱分野は、交通事故。そのほか、金銭問題、離婚、相続、その他幅広い分野に精通しています。
保険代理店向けに、顧客対応力アップを目的として「弁護士費用保険の説明や活用方法」について解説するセミナー講師を多数務めた実績があります。


初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2024年2月5日号(vol.289)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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