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2025年10月7日
コラム
先日、三重県名張市の国道で軽乗用車が横転し、10代から20代の5人が死亡し、1人が重傷を負うという痛ましい事故のニュースがありました。
唯一の生存者は高校生の男性ということなので、運転者はおそらく亡くなっているものと思われます。
自損事故で運転者が亡くなった場合、同乗者やその遺族はどのような補償を受けることができるのでしょうか。
本コラムでは運転者が亡くなった場合に同乗者やその遺族が受けられる補償について解説します(本解説では便宜上、同乗者と運転者が親族関係にないケースを想定して解説します)。
まず考えられるのは、事故車両が加入していた自賠責保険に対して保険金の請求をすることです。
各種報道によれば、今回の事故では4人定員の軽自動車に6人が乗車し、定員オーバーの状態にあったということですが、自賠責保険に関しては、同乗者に過失があっても保険金が支払われますので、単に定員オーバーの車に同乗したという理由だけで自賠責保険の支払いがなされないということはありません(※ただし、同乗者自身が車両の所有者であるなど一定の場合には、補償の要件を満たさないことがあります)。
運転者や車両の所有者が対人賠償保険に加入していた場合、その保険会社に対して、損害賠償金を請求できる余地があります。
もっとも、同乗者に過失があれば、支払いを受けられる額はその分減額されます(過失相殺)。
また、自賠責保険で既に受け取った保険金相当額は控除の対象となりますので、過失相殺後の損害額が自賠責保険金額を上回るかどうかが請求の一つのポイントとなります。
なお、同乗者の落ち度があまりにも大きい場合には、対人賠償保険金の支払事由に該当しないあるいは免責事由に該当するとして、保険金が支払われないということもありえます。
事故車両の運転者や所有者が搭乗者傷害保険(特約)に加入していた場合には、搭乗者傷害保険金を請求できる余地があります。
搭乗者傷害保険は対人賠償保険と異なり、同乗者が受けた損害全部を補償するものではなく、支払われる保険金額は契約内容に応じて定められていますが、同乗者の過失割合にかかわらず一定額の補償がなされるという特徴があります。
亡くなった運転者とは別に車両の所有者がいる場合、車両所有者に対して損害賠償請求をできる場合があります(運行供用者責任)。
任意保険で補償がなされないケースでは、こうした直接の損害賠償請求を検討することになります。
被害者側に過失があれば減額されること、自賠責保険で既に支払われた保険金が控除の対象となることは、前記2の対人賠償保険金と同様です。
任意保険で補償がなされないケースでは、運転者の相続人に対して、損害賠償金を請求することも考えられます(過失相殺と自賠責保険金の取扱いは前記2と同様です)。
もっとも、相続人全員が相続放棄の手続をとってしまえば、請求は困難になります。
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